(36)知的生産の技術研究会編『知の現場』
◎迷っている方にはよいかも 評価★☆☆☆☆
「知の現場」という題名にひかれて手に取りましたが、ちょっとがっかりの内容でした。エコノミストやベンチャー起業家などの仕事のやり方についてのインタビューを集めたものですが、読み終わってみて、仕事というのは自分で試行錯誤して、自分なりのやり方をつくりあげるしかないということが分かりました。さまざまな人の知的生産におけるインプットからアウトプットまでを図表化し、なにか特別な秘訣があるようにみせていますが、シンプルに考えれば、みな同じだという感想です。問題意識をもって情報を集め、仮説を立て、視点を明確にして、書くなり話しをするということです。
エコノミストの寺島実郎さんの言葉に集約されると思います。「情報収集というのは、その創刊の中で無限に拡大していく関心と好奇心を持ち続け問題意識を絶えず、その時代のテーマに引き寄せて収斂させていく、という緊張関係の中でしたできないことなのです。そして情報収集は、どんな方法論であろうと構わないのです」
ビジネス本では、「ルール」とか「法則」という書名ばかりが飛び回っていますが、寺島さんが言うように「どんな方法論」でもいいのです。というか自分に合った方法論は自分でしか使いこなせないのですから。方法論は自分がおかれた状況と、自分の目的というそれそれのケースバイケースでしかなく、「ルール」や「法則」は結局、自分でもがいてあがいて作り出すしかないので、他人の方法論通りにやってもうまくはいかないでしょう。何をやるのか、何が目的なのか、自分でもわけがわからなくて、迷っている方にはよろしい本かもしれませんが。私はNGでした。ビジネス本はやはり読む必要なしと、総集編のような本書を読んで分かったことでした。やさぐれ気味に終わります。<狸>